敷きつめられた しつらいの美学
緞通の匠
Prologue
クルマの乗り心地を左右するのは、
サスペンションか。あるいはシートか。
センチュリーの場合、その答えはまず足元から始まる。
オーナーを出迎える重厚なフロアマット。
その静謐な気品を支えるのは、
国を代表する建造物など、数々の歴史舞台を彩ってきた
高級絨毯「丹後緞通(たんごだんつう)」の匠たちである。
製法自体は、決して稀有なものではないという。
にもかかわらず、なぜ違いを生み出すことができるのか。
そこには匠たちが込めた、しつらいの美学があった。
第一章 足元のおもてなし 5,600粒の静寂
その静かな踏み心地は、匠の手仕事から生まれる。
ピストル状のマシンを操り、下地となる布の裏から一粒ずつ糸を打ち込むハンドフック技法。
通常の高級品が30センチ四方に4,200粒であるのに対し、
センチュリーの仕立ては5,600粒にもおよぶ。
そこにつまっているのは、単なる糸だけではない。
それは高密度かつ均一に打ち込む、繊細な技術の結晶でもある。
重厚なマットの奥にひしめく、幾千もの糸。
その一粒一粒が床下からのノイズを吸収し、
センチュリーには欠かせない静けさという余白を生み出している。
第二章 無地に浮かびあがる 熟練の矜持
一見、シンプルで単純な無地のデザイン。
しかしそれは、丹後緞通の匠たちが
長年かけて習得した腕の見せ場でもある。
柄のない世界。そこではミリ単位の凹凸が、美しさを損なう乱れとなる。
そのため同じ力で、同じ大きさの粒を、
真っ直ぐ打ち続ける高度な技術が求められるのだ。
ゆえに新人時代はみな、何千、何万発と繰り返し
体に染み込むまで、無地を徹底的に打つという。
流行とは別次元をゆく、シンプルの境地。
その凜とした無地の表面には、熟練の矜持が色濃く映し出されている。
第三章 情熱で染める 比類なき色と品格
「他のパーツの匠に負けぬよう、自分たちもこだわりを持って挑まなければと思った」
そう語る匠たちの姿勢は、糸の染色においても変わらない。
デザイナーから求められたのは、センチュリーの内装と完全に調和する色。
外部の原糸メーカーを巻き込みながら、ひとつの色に対して10パターンの試作を並べ、検証する日もあったという。
明度や彩度の微かな違いの中、探り当てたオンリーワンの色彩。
主張せずとも品格を放つその色合いは、
ものづくりと寡黙に向き合う匠たちの象徴でもある。
第四章 手と機械でつなぐ、 ものづくりの温もり
「必ずしも人の手に固執しない」と匠たちは語る。
任せられる仕事は機械に委ねるという進化。
それは代わりのきかない手仕事を守り、継承するための知恵でもある。
一方で匠たちは「手であれ、機械であれ
最後に“格”を決めるのは職人の想いである」という。
世界を代表するエグゼクティブが、このマットに足を下ろすかもしれない。
そうした誇りから生まれる情熱が、ものづくりに品格を与えてくれるからだ。
何を手で守り抜き、何を機械に委ねるか。
匠たちはその本質を見極めながら、ものづくりの灯を絶やすことなく、未来へとつないでいる。
取材協力:SUMINOE株式会社 / 丹後テクスタイル株式会社
取材協力:SUMINOE株式会社 / 丹後テクスタイル株式会社